ビタミンDは近年の研究で、ホルモンのような働きを持つことがわかり、他の栄養素とは異なる役割が注目されています。
この記事では、ビタミンDの重要性についてわかりやすく解説していきます。
ビタミンDとは
ビタミンDは骨を丈夫にするために必要な栄養素です。
他のビタミンと大きく異なる点は、体内で生成できることです。
通常のビタミンは食事から摂取する必要がありますが、ビタミンDは皮膚で太陽の紫外線を受けて合成されます。
また、細胞の核内にある受容体と結合し、遺伝子の発現にまで関与する特殊な性質を持っています。
このような働きから、ビタミンDはもはやビタミンではなくホルモンのような存在として考えられているのです。
現代人はビタミンD不足
現代人は、生活様式の変化や食生活の偏りなどにより、ビタミンD不足が広がっています。
とくに以下のような方はリスクが高いです。
- 若年層や女性
- 屋内で過ごす時間が長い人
ビタミンD不足は、骨の健康から免疫機能まで幅広い健康問題につながります。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助ける
ビタミンDは、骨を丈夫にするカルシウムの吸収を助けます。
- 血液中のカルシウムが不足すると、肝臓でビタミンDがスタンバイ状態になる
- 必要な時に腎臓で活性型ビタミンDに変換される
この活性型ビタミンDは、腸の細胞に「カルシウムを吸収して」という指令を出す重要な働きがあるのです。
マグネシウムとの協力関係
ビタミンDを活性型に変えるためには、マグネシウムも必要不可欠です。
つまり、骨の健康を守るには「ビタミンD・カルシウム・マグネシウム」の3つがチームで働くことが重要です。
マグネシウムが不足していると、せっかくビタミンDを摂取しても十分に活性化されません。
また、カルシウムだけを大量に摂取してもビタミンDがなければ効率的に吸収されません。
この3つの栄養素のバランスを保つことで、初めて骨の健康維持が可能になるのです。
ビタミンDの免疫機能への効果
近年の研究により、ビタミンDは骨の健康だけでなく、免疫システムの調整において重要な役割を果たすことが明らかになっています。
免疫細胞を活性化させる
ビタミンDは、免疫細胞を活性化させたり、過剰な活性化を抑えたりする働きをもつことから、免疫機能を調節する栄養素として注目されています。
ビタミンDの受容体は白血球に多く存在するため、ビタミンD不足は直接的に免疫力の低下につながるのです。
逆にビタミンDを充足させることで免疫が活性化し、Tレグ細胞の分化誘導へとつながります。
これにより、必要な時に免疫を強化し、過剰な免疫反応は抑制する免疫寛容の状態を作り出すのです。
リーキーガット症候群への効果
ビタミンDは、腸や脳のタイトジャンクション(細胞間の結合部分)を補修する重要な働きがあります。
このため、リーキーガット症候群の回復にも大事な栄養素です。
腸の粘膜に穴が開き、通常は吸収されない物質が血液中に入り込む状態
実際にリーキーガット症候群を有している方は、ビタミンDが不足していることがよくあります。
ビタミンDの補充により、腸壁の修復が促進され、腸内環境の改善につながります。
健康な腸は免疫の70%を担うため、腸の健康維持は全身の免疫力向上に直結します。
ビタミンDを摂取する方法
ビタミンDを摂取する方法は以下の2つです。
- 食事から摂取する
- 日光を浴びる
食事から摂取する
食事から摂取する場合は、魚類に多く含まれています。
- 白鮭
- アジ
- サンマ など
植物性食品には「ビタミンD2」、動物性食品には「ビタミンD3」が含まれており、どちらも体内でD3に変換されて利用されます。
しかし、毎日継続的に必要になるビタミンDを補充するためには、体内合成が重要です。
食事だけで必要量を満たすのは現実的に困難であり、日光による合成が主要な供給源となります。
日光を浴びる
体内でのビタミンD合成は、コレステロールを材料として始まります。
- 体内のコレステロールが「デヒドロコレステロール」という形に変化
- 紫外線(UVB)を浴びることで「プレビタミンD3」に変化
- プレビタミンD3は体温の力でビタミンD3に変化
こうして作られたビタミンD3は、血液にのって肝臓へ送られます。
このプロセスから分かるように、コレステロール値が低い方はビタミンDの材料が少ないため、免疫機能も低下している可能性があります。
適切なコレステロール値の維持は、ビタミンD合成にとって重要な要素です。
日光の重要性
「食事だけでも十分なのでは」と思う方もいるかもしれませんが、興味深い研究結果があります。
潜水艦の乗組員を対象にした研究では、何週間も太陽の光を浴びずに生活する乗組員にビタミンDをサプリで1日4000IU(推奨目安量)摂ってもらいました。
しかし、血液中のビタミンD濃度を維持できなかったという結果になりました。
日光をまったく浴びない生活では、食事やサプリだけでは不十分であることが証明されました。
このことから、ビタミンDをしっかり保つには、食事やサプリだけでなく日光を浴びることが、とても大事であることが分かります。
理想的な日光浴の方法
ビタミンDを効率よく体で作るためには、朝の時間に外に出て太陽を浴びることがポイントです。
理想は、午前中に20分ほどウォーキングやお散歩を行うこと

日焼け止めはビタミンD合成をブロックしてしまうので注意が必要です。
また、日本では4月から9月は紫外線がしっかり届きますが、10月から3月は紫外線が少なくなります。
そのため、秋から冬はビタミンDが不足しやすい季節となり、この時期に風邪をひきやすい人は、ビタミンD3のサプリを、1日1000IUほどから取り入れるのもおすすめです。
また、紫外線はガラスを通過できないので、「窓際にいる=ビタミンDが作られる」わけではない点に注意してください。
タンパク質の重要な役割
体内で作られたビタミンDも、食べ物から取ったビタミンDも、血液中をそのまま移動することはできません。
そこで必要になるのが、DBP(ビタミンDバインディングプロテイン)という運搬タンパク質です。
このタンパク質が、ビタミンDをくっつけて肝臓まで運んでくれます。
DBPは文字通りビタミンDの運び屋として機能し、血液中でビタミンDを安定した状態で輸送します。
このシステムにより、ビタミンDは必要な臓器や組織に確実に届けられるのです。
タンパク質不足がビタミンDに与える影響
タンパク質が不足していると、DBPも足りなくなり、ビタミンDをうまく使えなくなります。
せっかくビタミンDを十分に摂取したり、日光浴で合成したりしても、運搬するタンパク質が不足していては効果的に活用できません。
車に例えると、ガソリンはあるけれど配送トラックがない状態と似ています…
現代人はタンパク質不足になりがちですが、ビタミンDを効果的に活用するためにも、十分なタンパク質摂取が重要です。
血液検査によるビタミンD状態の把握
「自分にビタミンDが足りているかどうか」は血液検査でチェックできます。
そのときに見るのが「25(OH)ビタミンD」という値で、これが体内にどれくらいビタミンDが蓄えられているかを示しています。
血液検査には、もうひとつ「1,25(OH)₂ビタミンD(活性型)」という項目もありますが、これは参考になりません。
栄養状態をチェックするときは、貯蔵型の「25(OH)ビタミンD」を見るようにしましょう。
理想的な数値
25(OH)ビタミンDの数値による健康状態の目安は以下の通りです。
数値(ng/mL) | 状態 |
---|---|
50以上 | 理想(免疫にもよい) |
30〜50 | やや不足気味 |
20未満 | 欠乏状態・要注意! |
30未満になると、骨や免疫に影響が出る可能性が高まります。
20未満になると、カルシウムがうまく吸収できず「低カルシウム血症」になるリスクも生じます。
ビタミンDは免疫細胞を活性化する働きがあるので、25(OH)ビタミンDの値は50以上を目指したいところです。
30未満の場合はサプリメントを活用する
25(OH)ビタミンDの数値が30未満の場合は、ビタミンDサプリを5000IUほど摂取しましょう。
実際に、30程度だった人がビタミンD3サプリメントを約半年間ほど5000IU摂取すると、50あたりまで上昇したケースもあります。
ただし、高用量のサプリメント摂取は個人の体質や健康状態により影響が異なるため、独学でやるのは危険を伴います。



勝手に判断せずに相談してくださいね。
まとめ:ビタミンD は健康の基盤を支える栄養素
ビタミンDは、骨の健康から免疫機能まで幅広い生理作用を持つ、現代人にとって重要な栄養素です。
日光浴による体内合成と適切な栄養管理により、健康的な生活の基盤を築けます。
サプリメントを用いる際には、血液検査によるモニタリングを行いながら、安全に活用していきましょう。