必須脂肪酸の働きとは?

私たちが普段食べている油には、さまざまな種類の脂肪酸が含まれています。

最近は、「体にいい油」「体に悪い油」といった話を聞くことも増えましたよね。

でも実は、その違いは脂肪酸のかたちや性質で決まるんです。

この記事では、脂肪酸の基本的なしくみと、それぞれの特徴について解説していきます。

脂肪酸は大きく2つに分けられる

脂肪酸の種類

脂肪酸には、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があります。

この違いを理解することが、健康的な体を作るための第一歩です。

  • 飽和脂肪酸
  • 不飽和脂肪酸

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のちがい

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違い

飽和脂肪酸は、炭素同士がまっすぐにつながっていて、かたく安定した構造をしています。

そのため、常温で固まりやすいのが特徴です。

  • バター
  • ラード
  • 肉の脂 など

この安定性から、体内でエネルギー源として使われやすい一方で、摂りすぎると血液中で固まりやすく、動脈硬化などの生活習慣病のリスクを高める可能性があります。

一方、不飽和脂肪酸は、炭素のつながりの中に二重結合という特別な部分があります。

この部分で折れ曲がるため、脂肪酸のかたちはやわらかく、常温でも液体のままです。

  • オリーブオイル
  • なたね油
  • 魚の油 など

この特徴こそが、細胞膜をしなやかに保ち、血液をサラサラにするなど、私たちの健康維持に欠かせない要素です。

一価不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸の中でも、二重結合が1つだけあるものを一価不飽和脂肪酸といいます。

代表格は、オリーブオイルに含まれる「オレイン酸」です。

この脂肪酸は、構造が安定しているため、炒め物などの加熱調理にも比較的強く、酸化しにくいのが大きなメリットです。

そのため、日常使いの油として安心して取り入れられます。

また、一価不飽和脂肪酸は、健康的な体を維持するために欠かせない役割を担っています。

  • コレステロール値の調整
  • 動脈硬化の予防 など

体の中でもある程度作れるので、必須脂肪酸ではありませんが、健康にはとても大切な脂肪酸です。

多価不飽和脂肪酸

次に、二重結合が2つ以上ある不飽和脂肪酸を、多価不飽和脂肪酸といいます。

この中には、次の2つの種類があります。

  • オメガ3脂肪酸
    • 青魚、アマニ油、えごま油など
  • オメガ6脂肪酸
    • サラダ油、ごま油、マヨネーズなど

オメガ3は脂肪酸の端から3番目に、オメガ6は6番目に二重結合があることから名づけられています。

これらは体の中で作れない脂肪酸 = 必須脂肪酸なので、食べ物からとる必要があります。

必須脂肪酸の体内での働き

オメガ3やオメガ6などの必須脂肪酸は、体の中でとても大切な役割を果たしています。

とくに大きな働きはこの2つです。

  • 細胞をおおう膜の材料になる
  • 生理活性物質のもとになる

ここからは、この2つの働きをもう少しくわしく見ていきましょう。

細胞をおおう膜の材料になる

細胞膜

私たちの体は、約37兆個もの細胞でできています。

その一つひとつの細胞を包む細胞膜は、主にリン脂質という成分からできていて、その一部には必須脂肪酸が使われています。

この必須脂肪酸の種類やバランスによって、細胞膜のしなやかさがかわるんです。

細胞膜がしなやかだと、必要な栄養を効率よく細胞内に取り込み、いらない老廃物はスムーズに外へ排出できます。

もし必須脂肪酸が不足して細胞膜が硬くなると、この出し入れがうまくいかず、細胞の働きが悪くなってしまうんです。

生理活性物質のもとになる

必須脂肪酸は、体の緊急連絡係の材料です。

必須脂肪酸は体内でエイコサノイドという生理活性物質に変わります。

これはホルモンに似ていますが、もっと身近で働く「体のお知らせ係」のような存在です。

  • ホルモン = 血液に乗って全身にメッセージを送る
  • エイコサノイド = 分泌された場所のすぐ近くで働く

たとえば、「ここにケガをしたよ!」と治癒を促したり、血管を広げたり縮めたりして血圧を調整したり、体のバランスを整えたりします。

この素早い反応があるからこそ、私たちの体はケガや体調の変化に適切に対応できるのです。

つまり、この重要な「お知らせ係」の材料となる必須脂肪酸をしっかり摂ることが、体を正常に保つために欠かせないということです。

オメガ3とオメガ6はアクセルとブレーキの関係

じつは、エイコサノイドは、どの脂肪酸から作られるかによって働きが変わります。

  • オメガ6由来
    • 炎症をおこす方向に働く
  • オメガ3由来
    • 炎症をおさえる方向に働く

炎症は、体を守る大事な反応ですが、アクセルばかりでブレーキがきかないと、炎症がずっと続いてしまって、体に負担がかかってしまいます。

実際、現代の食生活では、オメガ6をとりすぎてオメガ3が不足しがちです。

理想は「オメガ6:オメガ3=2:1」なのに、「10:1」なんてことも!

このバランスがくずれると、アレルギー・生活習慣病・肌トラブルなどの原因にもつながります。

オメガ6をとりすぎると起こる問題

ここでは、オメガ6の中でもよくとりがちな、リノール酸に注目して、そのはたらきや、とりすぎたときの問題点を解説します。

  • 栄養不足になる
  • 慢性炎症の原因となる

栄養不足になる

リノール酸は、以下のような植物油にたくさん含まれています。

  • サラダ油
  • コーン油
  • 大豆油 など

リノール酸は体の中で、アラキドン酸(脂肪酸の一種)という成分に変わります。

アラキドン酸は、細胞膜や炎症の調節にかかわる大切な成分ですが、リノール酸をとりすぎると、アラキドン酸が増えすぎてしまうんです。

リノール酸がアラキドン酸に変わるとき、デルタ6デサチュラーゼという酵素が必要になります。

この酵素を働かせるためには、大切な栄養素をたくさん使ってしまうのです。

  • 亜鉛
  • マグネシウム
  • ビタミンB群
  • ビタミンC など

そのため、リノール酸をとりすぎると、本来ほかの働きに使われるはずの栄養が不足してしまうことになるのです。

慢性炎症の原因となる

アラキドン酸から作られる物質は、炎症を起こす物質としてよく知られています。

でも、これは悪いものではありません!

体を守るために必要な反応であり、

  • 細菌をやっつける
  • ケガから回復する
  • 胃の粘膜を守る

などの、大事な働きもしています。

問題なのは、リノール酸をとりすぎてアラキドン酸が増えすぎること。

そうなると、炎症がずっと続く状態になって、体のあちこちに不調が起こりやすくなります。

リノール酸をとりすぎてしまう原因

現代の食生活では、知らないうちにリノール酸をとりすぎてしまいます。

なぜなら、リノール酸は以下のような食べ物にたくさん使われているからです。

  • サラダ油・マヨネーズ・ドレッシング
  • スナック菓子・パン・ケーキなどのお菓子
  • ファストフード・揚げ物・総菜パン

家庭での調理だけでなく、外食や惣菜にもこれらの油が使われているため、意識せずにリノール酸を過剰摂取しがちなのです。

だからこそ、健康的な食生活のためには、まずこれらの過剰なリノール酸の摂取を控えることが重要です。

オメガ3脂肪酸の健康効果

ここでは、オメガ3脂肪酸の健康効果を2つご紹介します。

  • 炎症を収束させる
  • 脳や目、血管にもいいことがある

炎症を収束させる

オメガ3脂肪酸のEPAとDHAは、これまで炎症を抑える油として知られてきました。

しかし、最新の研究では、それ以上の大切な働きがあることが分かっています。

炎症は、体が傷ついた部分を修復するために必要な防御反応です。

しかし、炎症が長引くと、かえって体を傷つけてしまいますよね。

ここでEPAとDHAの出番です!

これらは、炎症をただ止めるのではなく、役割を終えた炎症を、きれいに終わらせるという働きをします。

このとき活躍するのが、EPAやDHAから作られる「レゾルビン」や「プロテクチン」といった特別な物質です。

この働きのおかげで、私たちの体は、

  • 関節の痛み
  • アレルギー反応
  • 血管のダメージ

といった、慢性的な炎症による体の不調からしっかり守られるのです。

脳や目、血管にもいいことがある

EPA・DHAから作られる物質は、炎症をしずめるだけでなく、さまざまな働きをしています。

  • 血管を広げて、血液の流れをよくする
  • 血栓ができるのを防ぐ
  • 記憶力や学習力のサポート
  • 目の健康を守る
  • 免疫のバランスを整え、アレルギーをおさえる

DHAは脳や目の中に多く含まれているので、頭を使う人や目をよく使う人にとっても、大切な脂肪酸です。

必須脂肪酸を上手にとる方法

体にとって大切な必須脂肪酸は、バランスよくとることがポイント。

でも、「どれぐらいとればいいの?」「何を食べたらいいの?」と迷う人も多いと思います。

ここでは、必須脂肪酸のとり方について、わかりやすく解説します。

  • 青魚を食べる
  • オメガ3脂肪酸の摂取目安量

青魚を食べる

私たちの体に欠かせないEPAやDHAは、青魚にたくさん含まれています。

  • サバ
  • イワシ
  • アジ
  • サンマ など

理想は、週に2〜3回、手のひらサイズの魚を食べること。

「でも、魚はちょっと苦手…」
「忙しくて、なかなか食卓に並べられない…」

そんな方は、EPA・DHAが配合されたサプリメントを活用するのも一つの方法です。

さらに効果的に摂るために

オメガ3脂肪酸の働きを邪魔しないよう、リノール酸(オメガ6脂肪酸)を過剰に摂りすぎないことも大切です。

現代の食生活では、サラダ油などに含まれるリノール酸を摂りすぎている傾向があるので、意識して減らすように心がけましょう。

オメガ3脂肪酸の摂取目安量

健康維持や体調改善のために大切なオメガ3脂肪酸ですが、その必要な量は目的によって変わってきます。

食事だけで十分に摂るのが難しい場合は、サプリメントを活用しましょう。

  • 健康を保ちたい人
    • 1日に合計 約2000mg(EPA・DHA各1000mg)
  • すでに炎症や不調がある人
    • 合計 約4000mg(EPA・DHA各2000mg)

これらはあくまで目安なので、体質や年齢、食生活によって変わります。

とくにサプリメントで多くとる場合は、専門家に相談するのが安心です。

まとめ:いい脂を選んで、未来の自分をもっと元気に!

脂肪は、太る原因と思われがちですが、実は私たちの体にとって必要不可欠な脂があります。

これが、健康な体づくりの土台になります。

大切なのが、オメガ3とオメガ6脂肪酸のバランスです。

現代の食生活では、知らないうちにオメガ6を摂りすぎていることが多いので、意識してオメガ3を積極的に摂るのがポイントです。

今日からできること
  • サラダ油や揚げ物の量を減らしてみる
  • 青魚を週に2〜3回取り入れてみる
  • 必要に応じてサプリを活用する

いい脂を選ぶだけで、疲れにくく、元気な毎日につながります。

今日から、できることから少しずつはじめてみましょう!